はじめに
1ヶ月の透析治療の医療費は、患者一人につき外来血液透析では約40万円が必要といわれています。
透析の治療は、継続的に行っていく必要があるため
年間換算では、約480万円かかることになります。
このように透析治療はとても高額な費用がかかりますが、
医療費の公的助成を利用すると自己負担のお金が軽くなります。
今回は、助成制度の一つである
『特定疾病療養受療証』について説明していきます。
特定疾病療養受療証とは?
特定疾病療養受療証は、
日本の健康保険制度のひとつとして提供される証明書で、
特定の病気(特定疾病)にかかっている患者さんが
医療費の自己負担を軽くするためのものです。
主な対象となる特定疾病は以下の3つです。
- 人工透析が必要な慢性腎不全
- 血友病
- 抗ウイルス薬を投与する必要がある先天性免疫不全症候群(HIV感染を含む)
特定疾病療養受療証を提示することにより、
1か月の窓口自己負担額が、
医療機関ごと(入院・通院別)
または調剤薬局ごとに
自己負担限度額までとなります。
※入院時の食事代や差額ベッド代等は対象外です
特定疾病療養受療証での負担額
通常、健康保険の自己負担額は3割ですが、
特定疾病療養受療証を利用すると
自己負担が月額1万円に抑えられます。
※70歳未満で被保険者の標準報酬月額が53万円以上の場合(上位所得)は月額2万円
(標準報酬月額…毎年4〜6月の平均給与)
参照:協会けんぽ「特定疾病に係る高額療養費支給特例について」
特定疾病に係る高額療養費について
特定疾病療養受療証を提示することにより、
1か月の窓口自己負担額が、
医療機関ごと(入院・通院別)
または調剤薬局ごとと説明しましたが、
透析ではほとんどの患者さんがお薬を飲むので
病院の外の薬局で薬をもらう場合は、
透析の病院で1ヶ月1万円(上位所得者は2万円)
薬局でお薬代として1ヶ月上限1万円(上位所得者は2万円)
の窓口負担が発生します。
しかし、病院と薬局の領収書をもって高額医療費の申請をすれば、
上限1万円(上位所得者は2万円)を超えた部分については後からお金が戻ってきます。
【ケース1】同一の月に複数の医療機関等で特定疾病療養受療証を提示した場合
(70歳未満・一般所得にあてはまる方)
2月10日:特定疾病療養受療証が交付
2月15日:A病院で特定疾病に係る外来診療
<総医療費 200,000円、自己負担額10,000円>
2月16日:A病院で処方された薬をB薬局で購入
<総医療費 30,000円、自己負担額9,000円>
※この場合、保険者に高額療養費の申請を行うことにより高額療養費の支給を受けることができます。
支給額:(10000円A病院外来+9000円B薬局)-10,000円(自己負担限度額)=9,000円
引用:協会けんぽ『特定疾病に係る高額療養費支給申請手続きについて』
ここで、注意が必要なのは
特定疾病に係る外来診療費とお薬代で
上限1万円(上位所得者は2万円)を超えた部分についてのみということです。
つまり、透析に関係する治療費とお薬代のみです。
他の病気での医療費やお薬代、歯医者での費用などは
特定疾病に係る高額療養費の支給対象外です。
申請方法
特定疾病療養受療証は、
加入している健康保険(保険者)から発行されるので、
- 協会けんぽもしくは組合健保
- 国民健康保険
- 後期高齢者医療保険
のいずれか加入している保険者の申請窓口にて申請を行います。
協会けんぽの場合
申請書の提出先は、
健康保険証(健康保険被保険者証)の
保険者名称:『全国健康保険協会〇〇支部』です。
下記にリンクを貼っておきます。
提出方法は、
協会けんぽ支部に郵送または 窓口へ直接持参の2通りです。
申請に必要なものは、
- 特定疾病療養受療証交付申請書(申請書の医師の証明欄に記載してもらう)
- 透析に関する意見書または透析になったことを証明する書類(申請書の医師の証明欄に記載してもらわない場合)
申請書のリンクを下記に貼っておきます。
保険者証の記号番号が不明の場合は、
マイナンバーを記入し、
本人確認書類貼付台紙が必要になります。
組合健保の場合
申請書の提出先は、それぞれの組合健保になります。
保険証の保険者名称を確認して提出方法などお問い合わせください。
申請書は各組合健保によって異なりますが、
協会けんぽの場合と同じように医師の証明・意見欄の記載が必要です。
国民健康保険の場合
申請書の提出先は、お住まいの市区町村の役所の国民健康保険課になります。
提出方法は、基本的に窓口のようですが、
窓口申請が困難な方に限り郵送での手続きが可能な市区町村もあるようです。
詳細は、各窓口にお問い合わせ下さい。
申請書はお住まいの市区町村によって異なります。
必要書類は、基本的に
- 国民健康保険特定疾病認定申請書
- 保険証(郵送申請の場合は保険証の写し)
のようですが、市区町村によっては
- 世帯主の印鑑
- 手続きする方の本人確認書類(運転免許証等)
- 世帯主及び特定疾病療養受給者証を必要とする方のマイナンバーのわかるもの(マイナンバーカード、通知カード、通知カード等)
等あるそうなので、各窓口にお問い合わせ下さい。
後期高齢者医療保険の場合
申請書の提出先は、お住まいの市区町村の後期高齢者医療担当課の窓口です。
提出方法は、国保同様窓口のようですが、郵送での手続きが可能な市区町村もあるようです。
詳細は、各窓口にお問い合わせ下さい。
申請書はお住まいの市区町村によって異なりますが、
他の保険と違って申請書に医師の記入欄がなさそうです。
必要書類は、
- 後期高齢者医療特定疾病認定申請書
- 医師の意見書(診断書)または対象となる病気にかかっていることを証する書類
のようですが、市区町村によっては
- 後期高齢者医療被保険者証(保険証)または資格確認書
- 本人のマイナンバー(個人番号)が確認できる通知カード等と申請者の身分証明書
等あるそうなので、各窓口にお問い合わせ下さい。
※それぞれの保険から違う保険になる場合は、
再度申請が必要なのでご注意下さい。
例)協会けんぽ→国民健康保険
国民健康保険→後期高齢者医療保険など
申請してから届くまで
大体数日〜最大1ヶ月程度かかるようです。
窓口〈オンライン申請〈郵送申請の順に時間がかかるので、
お急ぎの場合は、必要書類を揃えて窓口による申請をおすすめします。
更新について
69歳以下の方
特定疾病療養受療証の自己負担限度額は、
前年の確定申告や市民税申告等の結果により決定されるため、
毎年7月31日の有効期限が設けられています。
この有効期限は自動更新されるため、更新の手続きは必要ありません。
7月中旬に新しい特定疾病療養受療証が郵送されます。
70歳以上74歳以下の方
特定疾病療養受療証に有効期限はなく、
更新手続きの必要はありません。
(有効期限欄には「******」と印字されています。)
75歳以上の方
特定疾病療養受療証に有効期限はないため、
更新手続きの必要はありません。
申請が遅れるとどうなる?
特定疾病療養受療証は、申請月の初日から適用されます。
申請月の前月以前の分については、さかのぼって適用されないので注意が必要です。
受給者証は透析治療を開始した後すぐに申請することを推奨します。
もちろん透析導入時期は、体調が悪いことも予想されます。
透析開始が近い場合は事前に必要書類の準備をしておき、
緊急で透析が始まって入院した場合などは
代理人の申請も可能です。
マイナンバーと特定疾病療養受療証
マイナンバーカードを保険証として持参する場合、
特定疾病療養受療証の持参は不要になるそうです。
参照:マイナポータル『Q 窓口への持参が不要となる証類はどのようなものがありますか。』
注意※持参が不要となるだけで保険者への申請は必要です。
まとめ
今回は、特定疾病療養受療証について説明しました。
透析治療は、高額な治療であり長期間にわたって継続しなければなりません。
透析治療を開始した後もそれぞれの生活が続くため
助成制度を活用して自己負担を減らしましょう。
他にも利用できる公的助成や保障を紹介していきたいと思います。
ここまで読んでくださりありがとうございました。